Nick Goold
中央銀行の独立性とは、中央銀行が政府やその他の外部からの干渉を受けることなく、金融政策に関する決定をどの程度できるかを示すものです。
中央銀行の独立性の第一の目的は、経済の安定を促進し、経済に悪影響を及ぼす可能性がある高インフレを防ぐことが挙げられます。独立性は、中央銀行の意思決定に対する法的保護、政策決定の透明性、政府の政治的な所属に基づかない中央銀行総裁の任命権によって測ることが可能です。
中央銀行の独立性は、中央銀行が政治的な配慮や短期的な目標ではなく、客観的な経済指標と分析に基づいて意思決定を行うことを可能にするため、非常に重要です。
中央銀行の独立性を維持の目的は以下のとおりです。
経済の安定を促進する
中央銀行は、通貨供給量のコントロール、金利の設定、インフレの管理といった金融政策を実施する役割があります。独立した中央銀行は、政治的な配慮ではなく、経済指標に基づいた客観的な分析に基づいて意思決定を実施できるため、経済全体にとってメリットとなります。
政治的圧力の回避
独立した中央銀行は、政府や政党の意向を受けないため、短期的な政治的圧力や影響力を受けにくいです。そのため、中央銀行は、短期的には政治的に不人気でも、長期的な経済の安定を重視した決定ができます。
投資家の信頼性を高める
独立した中央銀行は、安定的で予測可能な経済政策へのコミットメントを示すことで、投資家の信頼を高めることができます。このことは、経済成長に不可欠な外国投資の誘致につながります。
信頼性の維持
中央銀行の実施する金融政策が効果を発揮するには、国民や投資家、金融市場との信頼・信用が不可欠です。独立した中央銀行は、政治的な影響や干渉を受けることがないため、この信頼性を維持できます。
透明性の向上
独立した中央銀行は、その意思決定プロセスにおいて、より透明性と説明責任を果たすことが求められることが多いです。これにより、金融政策の決定に対する国民の信頼と理解を深めることができ、経済の安定を促進できます。
独立した中央銀行がある国
主要先進国を中心に多くの国では、独立した中央銀行が金融政策を実施しています。しかし、この独立性は絶対的なものではなく、中央銀行は国民やそれぞれの政府に対して説明責任を果たす必要があります。
米国
連邦準備制度は独立した米中央銀行です。しかし、FRBは依然として議会に対して説明責任を負っており、議員にその活動を報告する義務があります。さらに、大統領はFRB理事会を任命しますが、政治的影響を防ぐため、理事会の任期は14年となっています。
EU
欧州中央銀行(ECB)は、世界で最も独立した中央銀行の1つであると考えられています。その独立性は、ECBの設立時に制定されたマーストリヒト条約に明記されています。
ECBの独立性は、複数の方法で確保されています。
まず、ECBの運営評議会は8年の任期で任命されたメンバーで構成され、各国政府を含むいかなる外部機関からも指示を受けることが明確に禁止されています。第二に、ECBは物価の安定を第一にすることが求められており、各国の政治的な動向に左右されません。最後に、ECBの収入は政府に依存していないため、年次予算プロセスやその他の政治的圧力に左右されることはありません。
実際、ECBは1998年の発足以来、高度な独立性を発揮してきました。世界金融危機や欧州債務危機など、経済的・政治的に大きな課題に直面しても、一貫して物価安定の使命を追求してきた実績があります。
イギリス
イングランド銀行は独立した中央銀行ですが、中央銀行総裁からの定時報告や議会証言を通じて、議会に対して説明責任を負っています。さらに、財務大臣がイングランド銀行に金融政策の指針を与える権限を持っています。
日本
日本銀行は独立した中央銀行ですが、その決定は政府によって審査されます。また、日本銀行の総裁と副総裁は、内閣総理大臣が指名する権限を持っています。
オーストラリア、カナダ、スイスをはじめ、多くの国が独立した中央銀行を有していると認められているが、その独立性の程度はまちまちです。中央銀行の独立性には幅があり、一独立性の程度は異なっています。とはいえ、中央銀行が政府の支配下または影響下にあると広く認識されている国の例をいくつか挙げます:
中国 - 中国人民銀行(PBOC)
イラン - イラン・イスラム共和国中央銀行 (CBI)
ベネズエラ - ベネズエラ中央銀行(BCV)
ジンバブエ - ジンバブエ準備銀行 (RBZ)
北朝鮮 - 朝鮮民主主義人民共和国中央銀行(CB)
パフォーマンス
中央銀行の独立性が高い国は一般的にインフレ率が低く、経済が安定していると言われていますが、中央銀行の独立性が唯一の要因なのかは経済学者の議論の的となっています。
近年、一部の国、特に新興国において、中央銀行の独立性が損なわれていることが懸念されており、中央銀行の独立性と政府の監視の適切なバランスをどのようにすればいいのか、議論が行われています。
中央銀行が発出する声明文の影響
このような独立性の高さから、中央銀行が発表する声明文は、非常に重要です。したがって、FXトレーダーにとって、どの中央銀行が高い独立性を維持しているのか、総裁や主要な政策決定をする人物は誰なのかを十分に把握することが重要となります。
中央銀行のトップは、定例記者会見や議会証言、総裁の就任・退任といったタイミングで、該当国の通貨に多くな影響を与えます。
金利の決定
中央銀行は金利を設定する役割を担っており、その国の通貨価値に影響を与えることができます。中央銀行のトップが金利の変更を発表したり、示唆したりすると、FX市場のボラティリティは大きくなり、該当国の通貨が活発に取引されます。
経済見通しまたはフォワードガイダンス
中央銀行のトップは、実体経済の状態を評価し、将来の経済政策のガイダンスを提供します。中央銀行のトップが楽観的な見通しを示せば、通貨に対する信頼が高まり、該当国通貨が買われやすくなるでしょう。逆に、悲観的な見通しを立てれば、通貨価値の下落につながる可能性があります。
独立性の認識
中央銀行総裁の交代が政府から示唆された場合は要注意です。これは、銀行の独立性に疑問を生じさせることであり、新しい総裁がより政治的な影響を受けることを懸念し、通貨価値の低下につながる可能性があります。
政治的安定性
中央銀行総裁の交代は、政治的な不安定さの象徴とも考えられ、該当国通貨にマイナスの影響を与える可能性があります。政策の変更や混乱の可能性を懸念し、通貨価値の下落につながる可能性があります。
全体として、FXトレーダーは中央銀行の発表を注視する必要があるでしょうこれらの発表が通貨価値にどのような影響を与えるかを十分に理解することが重要となります。