Nick Goold
耐久財受注とは？
耐久財受注は、製造業の健全性に関する情報を提供する、米国の重要な経済統計です。機械、電子機器、自動車など、3年以上使用できる耐久財の受注総額を測定します。
耐久消費財はなぜ重要？
耐久財は、一般的に食品や衣料品などの証文品よりも高価で寿命が長いため、耐久財の生産・販売が経済全体の規模や成長に大きな影響を与えることを意味します。企業が新しい設備や機械に投資すれば、製造業の生産量や雇用の増加につながり、経済成長と繁栄の原動力となります。
また、耐久消費財の需要は、消費者や企業の景況感と密接に結びついていることが多い傾向にあります。例えば、経済や金融情勢に楽観的であれば、消費者や企業は自動車や電化製品、家電製品などの耐久財に投資する可能性が高くなります。その結果、支出や経済活動の増加につながり、経済成長を促進させます。
また、耐久消費財の生産と販売は、経済全体に波及する可能性があります。他のセクターの企業は、消耗品や設備について耐久消費財メーカーに依存している場合があるからです。例えば、産業機械メーカーは、製品を製造するために、鉄鋼や電子機器などの耐久消費財に依存しています。耐久消費財の需要の増加は、経済の他のセクターの商品やサービス需要の増加につながり、複数の効果を生み出す可能性があります。
このような点から、耐久財受注統計はFXトレーダー、株式トレーダーにとって重要な指標となっています。
耐久財受注報告書
米国国勢調査局は、耐久財受注報告書を発行しています。このレポートは毎月第4週頃に発表され、耐久財の新規注文、出荷、在庫に関するデータが含まれています。
耐久財受注報告書を作成するために、国勢調査局は様々な業界のメーカーに調査を行い、耐久財の新規受注について報告をまとめています。そして、そのデータを集計・分析し、その月の新規受注額の合計を算出します。
また、米国の経済成長の原動力であるサービス業の業績については、この報告書には記載されていません。
耐久財受注のデータが予想を上回った場合、経済が好調であることを示唆し、最終的に金利の上昇につながる可能性があるため、米ドルに対する需要が高まる可能性があります。しかし、予想より弱いデータであれば、景気が減速している可能性を示唆し、金利の低下につながる可能性があるため、ドルの価値が低下する可能性があります。FX市場に影響する可能性が高く、重要です。
実際、歴史上、耐久財統計の強弱が各国の金融政策や金利政策の変更を促した例もあります。
歴史からの教訓
その一例が2008年から2009年にかけての世界的な金融危機の際に起こりました。米国では、耐久財受注統計で耐久財の新規受注が激減し、製造業と経済全体の減速が示唆されました。これに対し、連邦準備制度理事会（FRB）は金利をほぼゼロまで引き下げ、「量的緩和」と呼ばれる一連の措置を開始し、経済成長を後押しして本格的な景気後退を食い止めようとしました。
もう一つの例は、1990年代に日本で起こりました。その後、日本経済は減速し、物価が停滞しデフレとなっていきます。この景気後退は、企業が投資や耐久消費財の製造を止めたためです。その結果、日本政府と中央銀行は、金利の引き下げや資産の買い取りプログラムなど、経済成長を促進するための金融・財政政策をいくつも実施しました。
どちらの例でも、耐久財受注統計が金融・金利政策を大きく左右しました。耐久財受注報告の強弱は、中央銀行や関係者に経済の強弱を伝え、金利やその他の金融政策を巡る意思決定に影響を与える可能性があります。
もちろんですが、中央銀行や政策立案者が金融政策や金利政策を決定する際には、様々な経済指標を考慮することが不可欠であり、耐久財レポートだけに依存するわけではありません。耐久財報告書は、経済の健全性を評価し、政策決定の指針となる多くの経済指標のひとつに過ぎないのです。
