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Nick Goold

安全資産とは、投資家がマーケットのボラティリティが高くなったり不安定になったときに積極的に売買される銘柄・現物商品の総称です。一般に安全資産といわれる銘柄は、他のリスク資産の動きとは反対の動きとなる傾向があり、何らかのリスクが発生したときも安定した動きとなると考えられています。流動性も高いため、投資家は価格に直接影響することなく簡単に売買できます。

安全資産の代表的な銘柄は金(ゴールド)ですが、その他にも、銀、米国債、スイスフラン、日本円、ビットコインなどの仮想通貨も、安全資産と考えられています。

ゴールドが安全資産と考えられる理由

金(ゴールド)は希少性、耐久性に優れた資産であり、何世紀も前から安全資産として使用されてきました。現代でも、ゴールドは取引されており、株式や先物といったリスク資産よりも安定した価値を保有するため、投資家にとって、インフレやマーケットのボラティリティをヘッジしたいときに取引する1つの選択肢となります。

ゴールドの安全資産としての効果を発揮し、金価格が急騰・急落した3つの事例を紹介します。

1980年代の暴落

1970年代後半から1980年代前半にかけて堅調に上昇した金価格は、1980年代半ばに大暴落しました。インフレ率の低下とドル高により、安全資産としての金の需要が減少したことが要因だったようです。1980年から1985年にかけて、金価格は60%以上の下落となりました。

リーマンショックによる金融危機(2008年)

2008年、リーマンブラザーズの破綻に起因した金融危機の際、株式を中心に金融市場は大混乱に陥りました。その際に、安全資産としてゴールドに資金が流入し、金価格が急騰しました。2008年末の金価格の最高値は1,000ドルを超え、数年間で2倍以上の価格となったのです。

Covid-19のパンデミック(2020年)

2020年3月、COVID-19によるパンデミックが瞬く間に世界に拡がりました。経済が止まるといった前代未聞のような事態となり、マーケットは大混乱となりました。市場の先行き不透明感から安全資産としてのゴールドに買いが殺到し、金価格は急騰します。その結果、2020年8月、節目の価格である2000ドルを超え、当時の史上最高値を記録しました。ワクチンが開発・経済活動が再開となるにつれて、金価格は落ち着きを取り戻しましたが、パンデミック前と比較すると、高止まりの状態が続いています。

金価格の変動要因は何?

ゴールドはどのように取引できるのか?

金(ゴールド)は、CFD取引、地金現物取引、上場投資信託(ETF)、先物取引、オプションなど、様々な種類の取引が可能です。詳しく見ていきましょう。
CFD取引多くの証券会社・FX業者では金のCFD取引を提供しています。例えば、「XAU/USD」が代表的な銘柄名です。

XAUは金のシンボル名、USDは米ドルのシンボル名を示します。XAU/USDの価格は、1トロイオンスの金の価格を米ドルで表記したものです。例えば、XAU/USDの価格が2,000ドルであれば、1トロイオンスの金を買うのに2,000米ドルが必要ということになります。

FXトレーダー、CFDトレーダーは、他の通貨ペアと同じようにゴールド取引が可能で、レバレッジも利用することができます。MT4/MT5のような取引プラットフォームで通貨ペアと同じようにテクニカル分析やファンダメンタル分析をして、トレードできるでしょう。

ただし、ゴールドのCFD取引は通貨ペアよりも高いリスクが伴うことを覚えておく必要があります。通貨ペアよりもボラティリティが大きく、損益幅も大きくなるからです。そのため、金市場の特性を理解し、ストップロス注文など適切なリスク管理手法を駆使して、リスクを最小限に抑えるようにする必要があります。

個人FXトレーダーは、他の通貨ペアと同様にXAU/USDを購入または売却することができます。さらに、ブローカーの取引プラットフォームを通じて取引を行い、テクニカル分析やファンダメンタル分析など、さまざまな取引戦略を用いて取引の意思決定を行うことができます。

トレーダーは、金が急激な値動きをする不安定な商品であるため、金取引のリスクを知っておく必要があります。したがって、トレーダーも市場をよく理解し、ストップロス注文などのリスク管理手法を駆使して潜在的な損失を最小限に抑える必要があります。

金の現物取引

金のコインや延べ棒を実際に購入することも可能です。信頼できる金交換業者から金の現物を購入できます。これらの現物金は、貸金庫や専門の保管施設に保存できるでしょう。しかし、これらを利用するには、追加費用が発生することも知っておく必要があります。

上場投資信託(ETF)

ETFとは、金の価格に連動する証券で、主要な証券取引所で売買することができます。人気の高い金ETFの1つは「SPDRゴールド・シェアETF(GLD)」です。このETFは現物の金塊を保有し、投資家はETFの株式を売買することができます。

先物取引

金先物とは、将来の日付と価格において、指定された量を売買する契約です。この契約はシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)などの商品取引所で取引され、投資家は金を現物で所有することなく、金価格の値動きによって利益を狙えます。

オプション

金オプションは、投資家に特定の価格と日付で金を購入または売却する権利と義務を与える契約です。オプションは、価格変動に対するヘッジや投機的な投資として利用できます。

金現物の売買は信頼できるディーラーで、ETF、先物契約、オプションはネット証券会社・投資会社を通じて取引できます。しかし、先物やオプションなどのデリバティブ取引には、レバレッジや元本割れの可能性など、さらなるリスクが伴うことに留意することが重要です。したがって、他の投資と同様に、金や他の資産の取引の前に、自分の目標やリスク許容度を慎重に検討することが重要です。

金価格の変動要因は何?

金価格が変動する要因は様々ですが、ここでは代表的な要因とマーケットの反応傾向について紹介します。

世界の経済・政治情勢

経済および政治情勢が金価格の変動要因となることがあります。例えば、地政学的リスクの上昇、インフレ懸念、各国の中央銀行の政策は、安全資産としての金価格に影響します。経済の先行き不透明感や政治情勢の不安定化は、リスクオフの要因となり、金価格は上昇する傾向があります。

金利と通貨価値

金利と通貨価値も金価格と関連性があります。金には利息が発生しないため、金利低下はゴールドの需要を高める要因となります。また、通貨安の場合も、投資家にとってゴールドが買いやすくなるため、金価格の上昇要因となります。

需要と供給

金の需要と供給の関係も価格に影響します。例えば、鉱山の生産量の変化や季節ごとの消費者需要、中央銀行の売買によって価格が変動します。

テクニカル分析

FXトレーダーは、通貨ペアと同様にトレンドやパターンを特定するためテクニカル分析が利用できるでしょう。一般的には移動平均線、ボリンジャーバンド、フィボナッチリトレースメントが使用されます。

米ドルの通貨強弱

金価格は米ドル建てであるため、米ドルの値動き(通貨強弱)を考える必要があります。例えば、米ドル高になると、金価格には下落圧力となります。一方、米ドル安となれば、投資家が買いやすくなるため、金価格にとっては上昇圧力となります。

金の時価総額

ゴールドの正確な時価総額を知ることは難しいですが、「ワールド・ゴールド・カウンシル」によれば、2023年第一四半期の時価総額は約13.3兆ドルとなっています。

他の安全資産と比較しても、金の時価総額は高いといえるでしょう。例えば、安全資産として取り上げられることの多い仮想通貨ビットコインの時価総額は約5400億ドルです。

安全資産としての金の将来性はあるか

他の安全資産も需要はありますが、少なくとも現段階ではゴールドが代表格を占めると考えられます。ゴールドは何千年にわたって安全資産として利用されており、何回もの経済・政治的なリスク危機を乗り越えて評価されてきた資産だからです。

安全資産としてゴールドの人気が高いのは、希少性が高いこと、耐久性が優れていること、歴史的な経緯などが考慮されて、価値が認められているからです。金は他の資産との相関性が低いため、ポートフォリオのリスクを軽減したい投資家にとっては、分散投資の意味を持ちます。

最近では仮想通貨のビットコインが安全資産として注目されていますが、金のような信頼性や安定性は証明されていません。ビットコインは2000年代に誕生したばかりであり、ボラティリティも非常に大きいため、取引をためらう投資家も多いでしょう。

しかしながら、マーケット環境は急速に変化する可能性があり、将来には新しい資産がゴールドに変わる安全資産となる可能性もあります。しかし、当分の間はゴールドが主要な安全資産とみなされる可能性が高いでしょう。

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