石田 和哉
9月1週の米国市場は8月の雇用統計が市場予想の72.8万人から発表値23.5万人と大幅に予想を下回った。
過去7か月間で最も低い数字となっており、新型コロナウイルスの変異したウイルス「デルタ株」が米国で感染を広げている中で採用の手控えが起こっていることが示唆されたものの米国市場、ナスダック総合指数は最高値を更新、ダウ工業株30種、S&P500種は小幅安とまちまちの展開となっている。
パウエルFRB議長先月27日に行った米年次経済シンポジウムでの講演で、量的緩和の縮小開始時期は年内が適切との見方を示しながらも、すぐには決断を下さないとの見解を述べていたことで、ドル相場は先行き不透明な展開が続いているが、新型コロナの感染再拡大で景気回復が遅れるのではとの懸念が市場で噴出し始めた中で、市場予想を大幅に下回った雇用統計の数字が出たことはバットサプライズではあったものの、FRBは現行の政策を維持するのではという見方が強くなり、米国市場は最高値を更新している。
経済回復にストップがかかりつつある状況ではあるのだが、FRBによる量的緩和の縮小の開始が遅くなるのではという期待で値を上げる何とも言えない状況となっている。
(米国雇用統計推移)
(米BLSより)
9月第1週の注目ポイント(経済指標)
時間表記:日本時間
9月7日(火)
13:30 オーストラリア 豪準備銀行(中央銀行)、政策金利発表
18:00 ユーロ4-6月期四半期域内総生産(GDP、確定値)(前期比)
18:00 ユーロ4-6月期四半期域内総生産(GDP、確定値)(前年同期比)9月1日(水)
9月8日(水)
08:50 日本4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、改定値)(年率換算)
08:50 日本4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、改定値)(前期比)
23:00 カナダ銀行 政策金利
9月9日(木)
20:45 ユーロ欧州中央銀行(ECB)政策金利
21:30 ユーロ ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
9月10日(金)
15:00 イギリス7月月次国内総生産(GDP)(前月比)
21:30 カナダ8月失業率
21:30 カナダ8月新規雇用者数
日米市場
米国市場はSaas企業、インターネットを介してサービスを提供している企業の決算が一巡することから利益確定売りなどが出る可能性もあり、先週末の雇用統計の数字が市場予想を大幅に下回る数字となったことなど、時間を置いてから市場の中で悪材料として意識される可能性もあり、注意が必要となりそうだ。
日本市場は先週金曜に発表された菅総理大臣の自民党総裁選への不出馬というニュースから市場は急騰となったが、次期自民党総裁が誰になるのか、本当にコロナウイルス感染症への効果的な対策が打てるのかなど、様々な思惑によって市場は上下する可能性がありそうだ。
(MTSAAS推移)
MTSAAS:(Microsoft、Twillio、Shopify、Amazon、Adobe、Salesforce)の頭文字を取った造語。FAANG(Facebook、Amazon、Apple、Netflix、Google)の次に来る世界をけん引するであろう企業として注目を浴びている。
(https://www.bvp.com/より)
欧州市場
欧州市場ではストック欧州600指数が週間ペースで反発となったものの、8月ドイツIfo企業景況感指数、9月のドイツGfk消費者信頼感指数が低下するなど、上値の重い展開が続きそうだ。
ECB副総裁が新型コロナウイルス変異株による経済への影響は限定的であるとの見解を示したものの、経済回復が鈍化しつつあるという数字が出てきている事や、アフガニスタン情勢への懸念、中国での経済発表など、難しい展開は続きそうだ。
欧州の域内経済への新型コロナウイルスの影響、内需の影響は一時的なものになると思われるが、方向感の出にくい展開となりそうだ。
(ドイツIfo企業景況感指数推移)
(Bloombergより)
今週の為替(USD/CHF)
USDCHF 4時間足
今回はまず4時間足から説明をしていきたい。USDCHFの4時間足だが、三角持ち合いからの抜けを模索する形となっている。4時間足での判断は赤線の余白を抜ける部分で売買を行うのがよいのだが、全体の流れ特に、上位時間足での大きな流れを見て判断を行うと、売りが優勢となっている。
大きな流れで見る前に今回は4時間足での売りの可能性を説明したが、4時間足で長期間でのポジションを持つ場合には売り目線、買い目線で行く場合には上値には注意したいところだ。
USDCHF 日足
USDCHFの日足では4時間足と同じ、三角持ち合いの形が出現している。
4時間足での判断を先に行ったのだが、日足で5年~のスパンで見たとき、2015年のスイスフランショック後のレンジ相場を下回ってからの三角持ち合いであり、下降の可能性の強い形から、売り目線となった場合には強い流れとなりそうだ。
超長期で見た場合にも緩やかな売りという流れとなっており、フラッグ相場、となっている。直近の最安値はスイスフランショック後の最安値を更新しており、2011年以降での安値付近で何度も意識されていた価格である事から、しっかりと抜けを確認できれば売り目線で売買を行いたいところだ。