石田 和哉
25日の米国市場はウクライナに侵攻したロシアとウクライナとの間で停戦がなされるのではという観測から大きく値を上げる展開となった。
上げ幅は834ドルにも達し、上昇幅としては2020年1月以来の上げ幅となった。
ダウ平均は23日までの4営業日で1800ドルの下落となっており834ドルの上昇を安易に喜べるのか?今後の進展次第では再び下落となる可能性もある不安定な状況には変わりなさそうだ。
ウクライナへ侵攻を行ったロシアに対しての経済制裁の1つとしてSWIFTからの排除が行われる事が確実視されており、SWIFT排除による経済への影響は世界中へと波及しそうだ。試算ではSWIFTからロシアが全面排除となった場合、世界のGDPの1%を押し下げるともいわれている。
これらの影響がどのように表れてくるのか、ウクライナによる抵抗が激化するほどにロシアに対する経済制裁が強くなるほど市場は不安定な相場となることが考えられる。
(ウクライナのゼレンスキー大統領と閣僚 24日)
(Reutersより)
3月第1週の注目ポイント(経済指標)
時間表記:日本時間
3月1日(火)
24:00 米国2月ISM製造業景況指数
3月2日(水)
19:00 ユーロ 2月消費者物価指数(HICP、速報値)(前年同月比) 5.1%
19:00 ユーロ2月消費者物価指数(HICPコア指数、速報値)(前年同月比)
22:15 米国2月ADP雇用統計(前月比)
24:00 米国パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、発言
3月3日(木)
21:30 ユーロ欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
24:00 米国2月ISM非製造業景況指数(総合)
24:00 米国パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、発言
3月4日(金)
22:30 米国2月失業率
22:30 米国2月非農業部門雇用者数変化(前月比)
22:30 米国2月平均時給(前年同月比)
22:30 米国2月平均時給(前月比)
日米市場
日米市場共に不安定な相場となる可能性がある。
ウクライナ問題が長期化するほどに経済的な影響が出てくることは間違いなく、市場はウクライナ情勢に一喜一憂、右往左往する展開となりそうだ。
ロシアに対する経済制裁、依然として猛威を振るい続けるコロナウイルス感染症の感染拡大と難しい展開はまだまだ続きそうだ。
2日のFRB議長発言から4日の米国雇用統計までの3日間にも注意を払いたい所だ。
(ダウ平均 推移)
(Yahoofinancより)
欧州市場
欧州市場はウクライナ国境のロシア軍の一部の部隊が撤収との報道があり、値を上げたあとの突然の侵攻となった事で不安定な相場状況となっている。
米国務長官と露外相の会談もロシアによる侵攻によって棚上げとなり、侵攻に対する経済制裁によってSWIFTからの除外と石油とガスをロシアに依存するEUにとって非常に重い決断を行ったことなども今後の市場に影響を与えてくることとなりそうだ。
株価調整ともいえるが、地政学的リスク、紛争地域と陸続きであることも今後の展開にとって不安材料となる。
石油・天然ガス不足が懸念される中での価格の高騰、紛争の長期化・激化による影響とEUはコロナウイルス感染症を克服できないまま、次の問題に直面している。
(ウクライナにおけるロシアの進行状況)
(BBCより)
今週の為替(総括)
為替は全体的に見て、ロシアによるウクライナへの侵攻の状況、ロシアに対する経済制裁の内容次第で右往左往する展開となっている。
一部の通貨、AUD/NZDやCAD/AUDなど地政学的リスクにも経済的な結びつきもそれほどではない通貨は安定しているが、EURやGBPは地政学的リスクが強くなるなど不安定な相場状況となっている。
非鉄金属の一大産地の輸出国でエネルギー資源の産出国でもあるロシアに課せられるであろうSWIFTからの除外がEU各国のエネルギー需要のバランスを変化させてしまう可能性や核兵器など、更なる強硬策へと傾くことなどロシアとEU(NATO)との関係が再び冷戦時のように変化していく可能性もある事から暫くは難しい展開となりそうだ。
各国通貨の動向も不安定になる事から、「遠くの戦争は買い、近くの戦争は売り」ともいわれる投資相場ではあるが、安易な売買は行わず、冷静な判断を行いたいところだ。
AUD/NZDチャート
比較的安定している通貨ペア
AUDやNZD、CADなどでの売買を推奨したいところだが、遠くの戦争であっても様々な角度から経済に影響してくることからしっかりと判断はしたい所となっている。