Nick Goold
移動平均線は、テクニカル分析において、トレンド方向やエントリー・決済ポイントを特定するために活用されています。移動平均線には、主に2つの種類があります: 単純移動平均線(SMA)と指数平滑移動平均線(EMA)です。この記事では、これら2種類の移動平均の主な違い、メリットとデメリットを説明し、これらの指標に基づくトレード戦略やどのようなシグナルがあるのか、例で紹介していきます。
単純移動平均線(SMA)
単純移動平均(SMA)は、一連の終値の合計を使用する期間の数で割って計算されます。例えば、10日SMAは、過去10日間の終値を合計し、10で割ることで算出されます。この値をチャート上にプロットし、翌日以降もこの作業を繰り返します。
SMA = (N期間の終値の合計) / N
Nは、SMAを計算したい期間の数値です。
N期間の終値の合計は、過去N期間の終値の合計です(例:20期間のSMAを計算する場合、過去20期間の終値を合計します)。
例えば、ある通貨ペアの終値の10日SMAを計算したいとします。過去10日間の終値の合計を取り、それを10で割ると、当日のSMAの数値が得られます。
例えば、過去10日間の終値が以下の通りであった場合:
1.1000, 1.1020, 1.1050, 1.1005, 1.0990, 1.0965, 1.0980, 1.0950, 1.0910, 1.0905, とすると、現在の日の10日SMAは、次のようになります:
SMA = (1.1000 + 1.1020 + 1.1050 + 1.1005 + 1.0990 + 1.0965 + 1.0980 + 1.0950 + 1.0910 + 1.0905) / 10
SMA = 1.0965
つまり、当日の10日SMAは1.0965となります。
新しい終値が計算に加えられるたびに、最も古い終値が削除され、SMAが時間的に「移動」することに注意してください。これが移動平均線と呼ばれる所以です。
SMAは過去の価格に基づいているため、遅行指標となります。そのため、最近の価格変動には反応しにくく、新しいトレンドが発生してもSMAで確認できるまでには一定時間がかかることがあります。しかし、安定性が高く、価格が急速に方向転換したときでも、往復ビンタやダマシにある確率が低くなります。
指数平滑移動平均 (EMA)
指数移動平均(EMA)はSMAに似ていますが、直近の価格に重きを置いています。つまり、EMAはSMAよりも価格変動に反応しやすいということです。EMAの計算式はより複雑ですが、ほとんどのチャートソフトや取引プラットフォームでは、標準で備わっていますので問題ないでしょう。
EMA = (価格 - EMA_prev) x (2 / (n + 1)) + EMA_prev
価格:分析対象資産の現在の価格
EMA_prev:直前のEMA値(または初期EMA値、通常は最初のn個の値の単純移動平均に設定される)
n:計算に使用する期間:10、20、50)。
EMAの計算は反復的、つまり新しいEMAの各値は前のEMAの値によって決まります。したがって、最初のEMA値は、通常、最初のn個の値の単純移動平均を使用して計算されます。
EMAは、トレンドを早期に特定するときに有効であり、シグナルの精度も高いと言えるでしょう。ただし、激しい上下の変動が発生しやすいため、SMAよりも安定性に欠ける場合もあります。
主な相違点
SMAとEMAの主な違いは、その計算方法と各データポイントの取り扱い方法です。SMAは計算上、すべての期間が同じように扱われますが、EMAは直近の期間をより重視する計算方法となっています。その結果、EMAは最近の価格変動に反応しやすくなりますが、安定性に欠ける場合があります。
メリットとデメリット
SMAを使用する利点は、より安定していて、激しい上下の変動が少ないことです。長期的なトレンドの把握に役立ち、支持線や抵抗線として利用できます。しかし、SMAは直近の価格変動に反応するのが遅く、短期的なチャンスを逃す可能性があります。
EMAを使用する利点は、最近の価格変動に反応しやすく、トレンドをより早く特定できることです。また、より正確な売買のシグナルを提供できます。しかし、EMAは安定性に欠け、上下の変動が激しいという欠点があります。また、SMAよりも多くのシグナルを発生するため、判断が難しい場合もあります。
ここでは、主な違いとメリット・デメリットをまとめます:
単純移動平均線 (SMA)
指数移動平均 (EMA)
計算方法の特徴
SMA: すべてのデータポイントが平等に扱う
EMA: 最近のデータをより重視する
計算式
SMA = (N期間の終値の合計) / N
EMA=(終値-EMA(前回))×倍率+EMA(前回)
価格の反応性
SMA: 最近の価格変動に反応しにくい
EMA: 最近の価格変動へに敏感に反応する
滑らかさ
SMA: ノイズや揺らぎを平滑化する効果は低い
EMA: ノイズや揺らぎをなめらかにする
トレンド発生のタイムラグ
SMA: トレンドの変化に反応するのが遅い
EMA: タイムラグが少なく、トレンドの変化にも素早く対応
有用性
SMA: 長期的なトレンド分析に有効
EMA: 短期売買に便利
シグナルの精度
SMA: ダマシは少ないが、遅行性がある
EMA: ダマシが発生しやすい
リスクマネジメント
SMA: 値動きの影響を受けにくく、上下変動のリスクが低い。
EMA: 値動きの影響を受けやすく、上下変動のリスクが高い。
EMAとSMAには長所と短所があり、どちらを使うかは、最終的にはトレーダーの取引スタイル、リスク許容度、マーケットによって決まります。トレーダーの中には、EMAとSMAの長所と短所のバランスを取るために、両方を組み合わせることを好む人もいます。