Nick Goold
アメリカ雇用統計とは、毎月第一金曜日に労働省から発表される農業部門を除く前月の就業者数の増減などを数値で発表する経済指標です。
では、なぜアメリカの雇用統計が重要視されているのでしょうか。
農業部門を除く非農業部門就業者数は、雇用情勢に含まれる他の報告書とともに、今後の経済の方向性を判断する材料として理解されています。労働市場が成長しているということは、より多くの人々が収入を得られるようになることを意味し、収入が増えた分、支出も多く生まれ、経済が好循環していきます。これは経済を測る上で最も大きな尺度でもあるGDPの結果よりも重視されます。
FED（米国中央銀行）の目標は雇用を最大化することです。金利を変更、決定する際には注意深く雇用統計の数値を見定めます。雇用統計の数字が良い場合は経済が過熱しすぎることを避けるため、金利を引き上げる可能性があります。反対に雇用統計の数字が悪い場合は、企業が新しい雇用を創出しやすくするため、金利を引き下げる可能性があり、このようにして経済を刺激していきます。
雇用統計が予想よりも高い結果は、米ドルにとってプラス材料と見なされます。反対に雇用統計が予想よりも低い結果となった場合は、米ドルにとってマイナス材料と見なされます。また、前月の雇用統計の数値も同時に修正値が公表されるため、こちらの修正内容も合わせて確認することが大切です。例えば、新規雇用140,000件の予想値に対し、結果が150,000人だった場合、米ドルにとっては強気となるプラスの状態になります。しかし、前月発表された120,000人の新規雇用の数字が95,000人へ下方修正されれば、一転して米ドルは弱くなります。
雇用統計時のトレード方法
アメリカの雇用統計が発表されると、各マーケットには大きなボラティリティが生じます。また、システムトレードで使用されているコンピュータは、瞬時にとてつもない速さでニュースに反応し、激しい値動きの中でトレードを繰り返していきます。ニュース発表直後は値動きが激しく、ポジション決済が注文通りに約定しなかったり、注文とは大きく異なった場所で約定されることも多くあります。
そのため、雇用統計前にはポジションを全て決済し、保有しているポジションがないようにすることが最善です。また、数字が予想とどのくらい異なるかによっても発表後の値動きは異なってきます。どのような結果になったとしても、ボラティリティが通常よりも高まるため、スリッページが発生する可能性は高まります。
それでも雇用統計に合わせてトレードを行う場合は、ロットサイズは通常よりも小さく、ストップとターゲットは通常よりも大きく設定します。一般的にはマーケットが少し落ち着くまでトレードを控えて待つのが最善です。
ニュース発表を利用した3つのトレード戦略
戦略1）発表内容をフォローしたエントリー
この戦略は発表内容に素早く反応してトレードします。 例えば、雇用者数150,000人に対して結果が175,000人と発表されたら、直ちにUSDJPYで買いエントリーします。
戦略2）発表内容に逆らうエントリー
マーケットの値動きが過度に反応し過ぎていると考えた場合、発表結果とは反対のトレードを行います。発表結果の数値が予想よりも良く、マーケットがあまりにも上がり過ぎているときに売りエントリーを仕掛けます。
戦略3）発表後の初動を確認してからエントリー
発表が予想を上回っていてもマーケットが動き過ぎるとエントリーが難しくなります。せっかくエントリーしてもあっという間に損切りになってしまうことも珍しくありません。そのため、大きな初動が少し落ち着いて方向性が見えてから、マーケットのトレンド状況に合わせてエントリーします。
