Nick Goold
ATR(Average True Range)はテクニカル分析の指標の一つで、一定期間の値動きを分析し銘柄のボラティリティを計測するときに活用します。RSIやPivotポイントを発案したことで有名なJW.ワイルダー氏が開発した代表的なテクニカル分析指標です。FX通貨ペアはもちろん、株式、商品、先物など、あらゆる銘柄で利用されています。
ATRを計算するには、指定された期間における銘柄の「真のレンジ」の平均を取ります。一般的な市場のレンジの計測方法は、高値と安値の差を計算することですが、 ATRは前回の終値を使用するので、前回の終値と始値の間のギャップ(窓)が考慮され ます。
「真のレンジ」とは、以下の3つのうち最も大きいものを示します。
現在の高値と現在の安値の差
直前の終値と現在の高値の差
直前の終値と現在の安値の差
ATRで利用される一般的な期間設定は14です。設定期間の「真のレンジ」が計算され、その後、14本のローソク足の平均が計算されます。例えば、日足チャートで利用するのであれば、過去14日間の各日の真のレンジを計算し、各14日間の平均を計算します。ATRの値が高いほどボラティリティが高く、ATRの値が低いほどボラティリティが低いことを示します。
取引を改善するためのATRの利用方法
リスク管理
ATRを活用すれば、取引する銘柄のボラティリティを理解できるため、市場に適したストップロス幅・利益幅の設定が可能です。例えば、ATRの数値が高い場合、ローソク足1本あたりのボラティリティが高いことを示します。つまり、リスクが大きくなります。一方、短時間で大きめの利益を狙うこともできます。
ATRの数値が低いのであれば、市場が静かな状態であることを示しています。この場合、ストップロス幅を狭くできるでしょう。
例えば、日足チャートに適用している期間設定14のATRの数値が120Pipsの場合、スイングトレーダーであれば50%に相当する60Pips、1日のボラティリティの2倍に相当する240Pipsにターゲットを設定するというトレード戦略ができます。
5分足に適用している期間設定14のATRの数値が10Pipsの場合、デイトレーダーであれば50%の5Pipsでストップ、ローソク足1本分のボラティリティに該当する10Pipsにターゲットを設定できるかもしれません。
ストラテジーのパフォーマンスを向上させるには
エントリー・決済ポイントを見極める
ATRを利用すれば、ボラティリティに表れるエントリー・決済ポイントを理解できるようになります。取引している銘柄のATRの数値が急騰しているのであればボラティリティが急激に上昇しており、エントリー・決済のチャンスとなるかもしれません。一方、ATRが過去の水準より低いのであれば、トレンド発生の前兆かもしれません。トレンド発生のためにはエネルギーが必要で、大きなトレンドの前は非常に狭いレンジ相場となる傾向があります。
トレンドの強さを理解できる
ATRの推移を分析すれば、トレンドの強さを理解できます。例えば、ATRが上昇しているのであればトレンドの勢いが増していることを示し、ATRが下降している場合は、トレンドが勢いを失っていることを示唆している可能性があります。通常、ATRの数値が低い場合、レンジ取引の機会を探すのが最善です。
通貨ペア・銘柄の選択に活用する
異なる銘柄のボラティリティを比較し、自分のリスク許容度に適した銘柄をするときにATRを活用できます。一般的に、ATRの数値が高ければ、それだけ大きな変動があり、トレーダーが利益を得るチャンスを提供します。ATRを比較するときは、各銘柄のスプレッドも考慮に入れる必要があるでしょう。
例えば、ATRの数値が高くてもスプレッドが広い銘柄より、ATRがやや低くてもスプレッドが狭い銘柄の方がいいかもしれません。
平均値幅(ATR)は、トレーダーがボラティリティを簡単に理解でき、リスク管理やトレードの優位性の高い取引チャンスを見つけるための有用なツールとなり得ます。ATRを移動平均やサポート・レジスタンス分析などの他の指標と組み合わせれば、トレードスタイルに関わりなく、トレードの成績に貢献するでしょう。