Nick Goold
スリッページとは、取引の予想価格と取引が成立した価格との差のことをいいます。スリッページは、外国為替市場を含む金融市場でよく見られる現象であり、トレーダーの収益性や取引結果に影響を与える可能性があります。様々な要因により、約定価格が希望する価格から乖離し、スリッページが発生することがあります。その結果、スリッページは予期せぬ損失や利益の取りこぼしにつながるため、トレーダーの取引成績に大きな影響を与える可能性があります。
特に初心者トレーダーは、自分の注文が予想より悪い価格で執行されると、驚くことがあります。スリッページは、アットマーケットまたはストップロス注文（新規/決済）で発生します。
例１：USDJPYを買いたい場合
現在のオファー価格は135.015。買いボタンを押した後、
注文は135.019で約定されて、0.04pipsのスリッページとなった。
例２：USDJPYの損切り注文を出す場合
現在のビッド価格134.500で損切り注文を発注。売り注文は134.500ではなく、
134.490で約定されて1pipsのスリッページとなった。
このように不利な方向でスリッページが起きやすいですが、
きちんとしたブローカーであれば自分にとって有利なスリッページが働くことがあります。
例３：USDJPYを買いたい場合
USDJPYのオファー価格135.100。買いボタンを押した後、
注文が135.095で約定されて、0.05pipsの有利なスリッページとなった。
例４：USDJPYの買いポジション135.200を135.400で決済したい場合
135.400で決済ボタンを押した後、135.406で約定したため、0.06pipsの有利なスリッページになった。
FX取引におけるスリッページは、いくつかの要因によって発生します
要因１：市場のボラティリティ
市場のボラティリティが高い場合、値動きが速く、不規則になることがあります。このような期間には、意図した価格で取引を実行することが難しく、スリッページが発生する可能性があります。
要因２：流動性
流動性の低い通貨ペアや流動性の低い時期には、特定の価格での取引の相手方を見つけることが難しくなり、スリッページが発生する場合があります。
要因３：注文サイズ
特に流動性の低い市場では、大量の注文がスリッページの原因となることがあります。取引量が利用可能な流動性に比べて多い場合、注文全体を希望する価格で執行することは不可能です。結果として部分的に執行され、残りの部分でスリッページが発生する可能性があります。FX市場は流動性が高いため、個人FXトレーダーがこの問題に遭遇することはないでしょう。
要因４：マーケットへの影響
注文の発注は、特に大口注文の場合、市場に影響を与える可能性があります。市場参加者が新規注文に反応するため、需給関係によって値動きやスリッページが発生することがあります。これは、リテール・トレーダーではなく、大規模なヘッジファンド・トレーダーにとっての問題です。
要因５：ニュースイベントや経済指標の発表
大きなニュースイベントや経済データの発表があると、突然大きな値動きが発生し、スリッページが発生することがあります。トレーダーは、ボラティリティが急上昇する重要な発表の際に、よくスリッページを目撃します。
しかし、スリッページを最小限に抑え、取引結果を向上させるために、いくつかの手段を講じることができます。
適切なブローカーを選択する
信頼できる評判の良いブローカーを選ぶことで、スリッページを最小限に抑えることができます。ブローカーを選ぶ際には、以下の３項目が重要です。
1.約定スピード
迅速かつ効率的な注文執行を行うブローカーを探し、スリッページの可能性を低減させる。
2.市場の深さ
深い流動性プールと複数の流動性プロバイダーにアクセスできるブローカーは、より良い執行と低いスリッページを提供することができます。
3.透明性
ブローカーが透明性の高い価格設定と注文ルーティング・ポリシーを持っていることを確認し、自分の注文がどのように執行されるかを理解することができます。不利なスリッページだけでなく、有利なスリッページも情報を開示しているかも重要です。
ウェブサイトやレビューを読んでブローカーを判断するのは難しいので、複数の口座を開設し、価格を比較するのが最善の方法です。
デモ口座、そして実際の口座での取引を通じてのみ、実際のスリッページのレベルを知ることができます。
取引タイミングの最適化を計る
スリッページを最小限に抑えるには、タイミングが重要な役割を果たします。
ここでは、トレードのタイミングを最適化するための３つを紹介します。
1.高いボラティリティを避ける
大きなニュースが発表されたときや、市場のボラティリティが高いときは、スリッページが発生しやすいので、取引を控えるようにしましょう。
2.取引が活発な時間帯で取引する
一日のうちで最も忙しい時間帯は、流動性が高く、スプレッドが狭いためその時間帯に集中して取引しましょう。例えば、東京時間のオープニングからロンドン時間のオープニング、ロンドン時間の午後4時ごろのクローズまでがその例です。
3.経済カレンダーを監視する
外国為替市場に影響を与える可能性のある経済イベントやデータの発表について常に最新情報を入手し、重要な発表の前後でポジションを持つことは避けましょう。
指値注文を利用する
スリッページを回避するためには、指値注文を活用することが有効です。スリッページが発生しやすい成行注文を実行する代わりに、価格水準を指定した指値注文を発注します。
指値注文は、支払う価格や受け取る価格をコントロールできるため、希望する水準以上で注文を成立させることができます。ただし、指値注文は取引機会を逃す可能性があることを理解し、スリッページのコスト削減とのバランスを取ります。
監視と適応
市場の状況やブローカーの執行品質が変化する可能性があるため、スリッページのパターンや事例を特定するために、常に警戒して取引を監視してください。
以下は、スリッページが増加していることに気づいたときに役立つ２項目です。
1. 注文の執行状況を確認する
ブローカーが提供する執行品質と速度を評価し、
必要に応じて他のプロバイダーに変更することを検討します。
2.取引戦略を変更する
取引戦略を分析し、現在の市場環境と一致しているかどうかを判断する。
アプローチを調整することで、スリッページのリスクを軽減することができます。
例えば、経済指標発表時、または前後にポジションを保有し、
それが損失の原因となっている場合、戦略を変更する必要があるかもしれません。
テクノロジーを活用してスリッページを最小限に抑える
1.自動売買システム
自動売買システムは迅速に取引を実行し、人間の意思決定の遅れに起因する手動エラーやスリッページを軽減することができます。
自動売買システムはチャートシステムに合わせたプログラム言語を用いてシステムを組みます。必要な言語のプログラミングができるならば挑戦してみても良いでしょう。
または、今では誰でも自動売買システムを購入できる機会があるので、購入して試してみるのも良いでしょう。
2.仮装専用サーバー（VPS）
仮想専用サーバー（VPS）もスリッページを減らすのに役立ちます。VPSは、取引プラットフォームをホストし、取引戦略を実行するための仮想マシンです。
VPSを使用することで、遅延を減らし、取引のスピードを向上させることができ、スリッページを回避することができます。
最近ではサーバー会社がVPSを個人向けに提供しており、価格も1,000円前後からあります。スリッページの回避だけでなく、リモート環境での相場環境のチェックにも最適です。
スリッページは時にイライラさせるものですが、取引につきものであるという認識が重要です。したがって、トレーダーはスリッページをなくそうとするのではなく、スリッページに関連するリスクを理解し管理することを目指す必要があります。
